歌手、声優、音楽ディレクターなどを務める木村聡子さんは、ScanSnapのベテランユーザー。最新のiX1500も、楽譜のデジタル化、子供の教材、小説、マンガの自炊など、さまざまなものをスキャンするプロファイルを作って活用中です。
今回の取材には木村聡子さんのスタジオにうかがった。「じゃあ、ちょっと歌ってみますね」と言うなり、木村聡子さんはピアノを弾きながら歌い出した。
あたりの空気感がパンと変わった。まるでエルサの魔法が周囲の景色を変えたみたいに! いや、プロとはすごいものだ。舞台ではなく間近で聞いたので、余計に驚いた。木村聡子さんはこの『声』と『歌』を仕事にしている人。『アナと雪の女王』をはじめとしたディズニー映画の日本語版吹き替えの声優・歌手、外国映画の日本語版音楽演出、舞台の歌唱指導を行ったりしている人だ。
この時に、木村さんは2台のiPad ProにScanSnapでPDF化した楽譜を表示させている。大きな12.9インチの最新型のiPad Proには伴奏用のスコア譜、10.5インチのiPad Proには歌のメロディの譜面を表示している。
※譜面データは私的利用の範囲で活用されています。
譜面データはPiascoreというアプリで表示している。このアプリなら、たくさんの譜面のスキャンデータを管理することもできるし、セットリストでまとめることもできる。紙の譜面の時と違って、いつでも手持ちのデータから曲を探して追加することができる。ちなみに、ウィンクなどでページをめくる機能もついているが、それは使っておらず、指でフリックしている……とのこと。
Apple Pencilを使って紙の楽譜と同じように書き込みもできるし、もはや手放せないものになっているという。
一番こだわってるのが楽譜をスキャンしてiPadの楽譜アプリに取り込む手法。単ページ表示か、見開き表示か。演奏しながらのめくりの良さ、ストックのしやすさなど使いやすい独自のやり方を構築するまで、試行錯誤するのが木村聡子流。
左:iPad Pro 12.9インチの第3世代に伴奏の楽譜を表示し、10.5インチに歌うメロディの楽譜を表示するという手法にたどり着いた。歌は鳥肌が立つほどすごかった。 右:裁断した楽譜のスキャン。五線譜は微妙な傾きが非常に気になるので、取り込んでから厳密に水平を調整したりする。専用のプロファイルをいくつも用意している。
iPad Pro 12.9インチの第3世代に伴奏の楽譜を表示し、10.5インチに歌うメロディの楽譜を表示するという手法にたどり着いた。歌は鳥肌が立つほどすごかった。
裁断した楽譜のスキャン。五線譜は微妙な傾きが非常に気になるので、取り込んでから厳密に水平を調整したりする。専用のプロファイルをいくつも用意している。
木村さんは実にITに詳しい。そして、すべてをキッチリ整理・設定しないと気が済まないタイプである。
パソコンを買ったのはWindows 95の時代。インターネットがやりたかったからだ。スキャンを始めたのは、マンガや小説が数千冊家にあって、それを捨てることができなかったからだ。デジタル化したいと思って、アメリカで発売されたKindleを買って、一般的なフラットベッドスキャナーでスキャンしてみたが思うように便利にならなかった。
その後、ScanSnapが気になってきた。S1500が出た時に、裁断機と共に買って自炊を始めた。といっても、裁断してちゃんと本のデータとして保存するには手間がかかる。表紙を別にカラーでとったりして手作業で組み合わせたりしているので、余計に時間もかかる。全力で取り組んでも1日15冊がせいぜいだという。それでも部屋にスペースを作るためにコツコツと長い期間をかけて取り組んだという。
「1日10冊スキャンしたら、100日で1,000冊でしょ?」と木村さんはおっしゃるが、なかなかできることではない。
こだわりがはっきりとしている木村聡子さん。使うデバイスに完全な使いやすさを求める。
左上:何千冊もある本をスキャンしてデータ化してきた。いつ読めなくなるか分からない電子書籍は好きじゃない。 右上:愛用の裁断機は40枚までしか切れないので、カッターで本を分解。半分、また半分と分けると切りやすい。 左下:通常の裁断機だと断面が斜めになってしまうが、サークルカッターを使うカール事務器製だとまっすぐに切れる。 右下:糊で張り付いているページがないか確認。これを怠ると重送や、ジャムの原因になる。糊を取っておく。
何千冊もある本をスキャンしてデータ化してきた。いつ読めなくなるか分からない電子書籍は好きじゃない。
愛用の裁断機は40枚までしか切れないので、カッターで本を分解。半分、また半分と分けると切りやすい。
通常の裁断機だと断面が斜めになってしまうが、サークルカッターを使うカール事務器製だとまっすぐに切れる。
糊で張り付いているページがないか確認。これを怠ると重送や、ジャムの原因になる。糊を取っておく。
書籍の本文はご覧のようなカタチでスキャン。最新のiX1500なら重送の心配はほとんどない。
Kindleなど、電子書籍が増えているが「所有権を借りているという考え方が嫌い」と木村さん。たしかに、今の電子書籍だと、たとえば電子書籍配信元が潰れたり、規約が変わったりすれば何千冊、何十万円分買っていてもそれが読めなくなる。だから木村さんはスキャンしてPDFを自分で持つことにこだわっている。
「最近スキャンするのが子供の問題集」と木村さん。ちょうど娘のえいみちゃんが、小学校の受験で問題集をたくさんやったのだそうだ。小学校受験の問題集は1日分が1冊1,000円というようなものが多いという。スキャンしてデータ化し、タブレットで見れば、外出先でもできるし、同じ問題に何度も取り組むことができる。こちらも本と同じくきれいに裁断してデータ化する。
えいみちゃんは今、小学校の1年生。昨年は小学校受験のために。いまもお母さんの指導で、たくさんの問題と格闘中。
富士通の大型電子ペーパーのQUADERNO(クアデルノ)は、発光体である液晶を子供に長時間見せるべきではないかもしれない……ということで、えいみちゃんの勉強用に用意した。
左:問題集を裁断してスキャン。電子化しておけば、タブレットさえあればいつでも、何度でも問題集に取り組める。 右:えいみちゃんが使うのは富士通のQUADERNOのA4モデル。eインクの良さは目への負担の少なさにある。
問題集を裁断してスキャン。電子化しておけば、タブレットさえあればいつでも、何度でも問題集に取り組める。
えいみちゃんが使うのは富士通のQUADERNOのA4モデル。eインクの良さは目への負担の少なさにある。
楽譜、蔵書の自炊、娘さんの問題集……にScanSnapを活用しまくっている木村さんだが、プロファイルの使いこなし度合いがすごい。
たとえば、どのサイズの楽譜か、楽譜は見開き表示にするかどうかなどによっても違うプロファイルを用意している。傾き補正をした方がいい場合と、しない方がいい場合もあるそうで、それも分けている。本も表紙と、中面カラーページと、モノクロページのスキャンで設定を分けており、それぞれに最適な設定で美しくスキャンしたデータをパソコンで繋ぎ合わせているという。
裁断も通常の裁断機では、切断面が斜めになるので、カール事務器製のディスクカッターを使用。スキャンしたドキュメントは、基本的にはパソコンのストレージを経由。自分でリネームしたり繋ぎ合わせたりしている。
すべてに手間を惜しまず、自分が使いやすい仕様、必要とするクオリティに線引きしてこだわっているところが実にすごい。
手差しスキャンの設定でカバーを読み取る。表紙やカラーページもそれぞれにプロファイルを作る。
左:出先や、スキャナーのない部屋ではiX100を使うことも。さすがScanSnapプレミアムアンバサダーだ。 右:PDFをBOOX Nova Proで読む。iPadで読む時はi文庫HD。
出先や、スキャナーのない部屋ではiX100を使うことも。さすがScanSnapプレミアムアンバサダーだ。
PDFをBOOX Nova Proで読む。iPadで読む時はi文庫HD。
楽譜、小説、子供の問題集と、それぞれ目的がはっきりしている。目的に合わせて、詳細なセッティングを煮詰めて、それをプロファイルとして一発で呼び出せるのがiX1500のメリットだ。木村さんのような使い方だと、本当にiX1500の利点が引き出せるといっていいだろう。たとえば、同じDropboxに入れるにしても、パソコンに取り込んでDropboxに入れるのと、iX1500から直接クラウドに送るのでは手間が違う。パソコンに取り込んだ方がOCRの都合が良いし解像度も高いものが選べる。木村さんの経験では、パソコン経由の方がOCRが上手くいく。見開き表示か、左右ページを1枚1枚別のページとして読むのか? など、必要性に応じて細かい設定が可能。これまで見た中で、一番プロファイルを使いこなしているかも。
楽譜の傾き補正の有無でプロファイルを分けている 楽譜の場合、水平がキッチリと出てないと傾きが目立つのだが、自動の傾き補正が上手く行く場合もあるし、上手く行かない原稿もある。だから手動の時のためにプロファイルは分けている。
見開き原稿を左右分けるか合成するか、PCかDropboxか iX1500からはキャリアシートがなくてもA3、B4のドキュメントを読めるようになった。ふたつ折りでスキャンすると、左右繋ぎ合わせてくれるようになったが、別ページにする設定もできる。
書籍の本文ページとカバーのプロファイルは別々に 書籍の本文ページと、カバーのプロファイルも別に設定している。本文はモノクロで、文字はクッキリ。カバーは長尺の読み込みが可能な状態でカラー。それをパソコンで1ファイルにする。
■取材協力 木村聡子(きむら・さとこ)さん 歌手、声優、歌唱講師、舞台歌唱指導、音楽ディレクター。 ディズニーの『魔法にかけられて』の日本語版主役ジゼル吹き替えや、『アナと雪の女王』『美女と野獣』など多数に出演、音楽演出。 ScanSnapプレミアムアンバサダー。
木村聡子の自炊レシピ 歌手・声優の木村聡子さんが、ScanSnapを使い、紙の書籍を電子化する手順を公開しています(個人のブログであり、木村聡子さんの考え方に基づくものです)。
記事制作:flick!編集部
本記事は『flick! digital(フリック!デジタル)特別編集 デスクが片づくデジタル超整理術』に掲載されました。記事は2019年11月10日時点の内容です。
※ ディスクカッターは、カール事務器株式会社の登録商標です。
ScanSnap iX1500
毎分30枚・60面の両面高速読み取りを実現。原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別し、驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。
ScanSnap iX100
バッテリー・Wi-Fiを搭載しながら、わずか400gのコンパクトボディ。場所を選ばず原稿を電子化でき、手軽に情報の保管や共有が可能。
※ 著作権の対象となっている新聞、雑誌、書籍等の著作物は、個人的または家庭内、その他これらに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合を除き、権利者に無断でスキャンすることは法律で禁じられています。また、スキャンして取り込んだデータは、私的使用の範囲でしかご使用になれません。
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